- January 31, 2008 4:39 pm
神戸在住10<木村紺/講談社>
![]() |
神戸在住 10 (10) (アフタヌーンKC) 木村 紺 講談社 2008-01-23 |
美しくも充実した完結巻。
この1冊の完成度をもって、「神戸在住」はアオリ文の通りの「一生、読み続けられる本」になった、といえる。
描き足しと描きおろしの充実度は、掲載時の状態が「予告」だったかのような素晴らしさ。
これを読めるのなら、延々待たされたことも水に流せるというもの。
人物の細やかな描写に定評がある作品だけども、最終刊は特にその傾向が強くて、ほとんどのキャラが「抱えていたもの」が、一段落という形で描かれる。
その中でも特筆は、やはり、タカ美と桂の関係、そして日和さんのこと。
「日和洋次の視点」という「挿話」で、わたしたちはもう一歩、日和さんの世界を知ることが出来る。飄々とした印象の画家が内包する、様々なもの、様々な思い。人間の深さというものを思い知らされる、なんていうとありきたりだけど、それをこそ痛感する、見事な活写だと思う。
遺作となった「翼のある少女」の絵を描きあげるエピソードが特に秀逸で、これを桂に教えてあげられたら、どんなにかかの女は楽になれるだろうと、本当に心苦しい涙が出る。
とにかく、1巻から最終巻まで、全くの破綻がないのは驚き。
タカ美が桂に抱えている心の傷ですら、その一部は既に4巻で出てきているのだ。あれが最後に、こんな形で生きるとは、誰も考えなかったに違いない。
そんな風に、丁寧に線を引かれた表現で描写される「キャラ」には、異常なくらいの現実感がある。もはやこれは「キャラ」ではなくて「人物」というのがふさわしいレベルだろう。
ちむらさんの人間観察力には、本当に驚かされる。
だからこそ、最終巻を読む前に、通しで読むのをおすすめしたい。
やがて10巻の最終ページを読んだその時、「みんな、今はどうしてるんだろう」という思いがわき上がるのを実感することが出来るはずだから。
読後に自らの周囲の人たちや世界をいっそう大切にしたくなる、そんな作品。
ありがとう、ちむらさん。
この作品に、出会えてよかった。
惑星(ほし)のさみだれ1〜4<水上 悟志/少年画報社>
![]() |
惑星のさみだれ 1 (1) (ヤングキングコミックス) 水上 悟志 少年画報社 2006-01-27 |
どちらかというと好きな絵柄ではないのに、アワーズ連載時から何か気になる作品だった。
特に1巻のヒロインは顔が固定してなさすぎですごいものがあったけど、現在は絵的にも安定してきて、よくなった。
この面白さを説明するのはちょっと難しいんだけど…荒唐無稽にもほどがある設定なのに、人物の描写が妙に繊細だったりするからかな。
思うに、この作者、キャラの殺し方が上手いんでは。ジュビロなみに上手い。役目を終えたキャラが、鮮やかな引き際で散っていく…という演出がものすごく上手いんだと思う。
実際、2巻の後半からのエピソード(半月の死)でついに泣かされてしまい、以降は1巻に1つは泣きどころがある、という結果に。
基本がのんきな作風なのに、時折、冷酷なまでに現実的なエピソードや設定があるし、何故か性格や趣味が両極端なキャラが多いのも特徴。
つまり、色んな面での両極端ぶりが面白い作品…と言えるかも。
ジャンルわけするなら「ふんわりファンタジーSF」かな、と思うけど、好き嫌いはありそう。
絵柄はサッパリ&カワイイ系で読みやすいものの、どちらかというと、玄人受けする作品じゃないかと。ストーリー的にも細かな伏線を感じさせるんだけど、そんなとこもまた。
連載の方は今も盛り上がってるらしいので、続きが楽しみ(現在は単行本派)。
薬膳だから<柳田栄萬/講談社>
![]() |
薬膳だから。かんたん! おいしい! からだにいい! 柳田 栄萬 講談社 2007-06-06 |
おひっこし―竹易てあし漫画全集<沙村広明/講談社>
![]() |
おひっこし―竹易てあし漫画全集 (アフタヌーンKC) 沙村 広明 講談社 2002-06-21 |
これは新刊に非ず。
アフタヌーン系が続いているのは、単純に好み。
元来が青年誌好みの上、劇画に近い、緻密な絵が好きなんだけど、アフタはそういう意味で読み応えがあるから、昔から愛読者だったりする(中にはそういう絵柄じゃない作家さんもおられますが)。
大昔は少女漫画がメインだったんだけど、90年代半ば頃になって少女漫画をパッタリ読まなくなった。その少し前から青年誌に没頭してたため、沙村さんはデビュー時から知ってる。
つまり、「むげにん」は第1回から読んでたりするよ。いずれ、大人読みする予定。
アフタには時折、異常に絵の上手い作家さんが出てくるんだけど、沙村さんもそのお一人で、登場時のあまりの絵の上手さは、驚いたどころの話じゃなかった。
そんな緻密な絵をもって、沙村さんの「ご趣味」全開で描かれた短編作品をまとめたのがこの1冊。
「おひっこし」の、なさそうでありそうな、ありそうでなさそうな、微妙なリアル感と温度は、「巨娘」にも通じるところがあるかも。ラチガイ娘は出て来ないけどね。
ちむらさんの「巨娘」同様、「むげにん」で慣れているファンをズンドコの嵐に叩き込んだのを覚えてますとも(笑)
ネタの捻り方と盛り込み方、そして各ページが持つ圧倒的な情報量にはとっても満足。わたし的にはとっても面白かった。大まかに言うとラブコメなんだけど、繊細な心理が描かれてもいるので、単なるお笑いには終わっておらず、読み応えは充分。
同時収録の「涙のランチョン日記」は「真剣にバカ」をやっておられるので、荒唐無稽の見本みたいな作品。ゆえに、リアルはこれっぽっちもない…と言いたいところだけど、「嘘をつくには本当のことを少し混ぜる」の法則通り、リアルがいい感じに花を添えててヨシ。
この本もまた、激しく下ネタ満載なので、お上品とは言い難いので悪しからず。
しかし、わたしが好きな作家は、すごくシリアスな作品を描く傍ら、こういう「真剣にバカ」系のお笑い作品を描く人が多い…。
絶対にそれをやらないだろう、と思えるのは、五十嵐さんくらいだな。
コレと「むげにん」以外の沙村さんの作品は、アフタ掲載分なら全部知ってるんだけど(いずれも好き)、「ブラッドハーレーの馬車」は、今のところ保留。
でもなあ、何となく、いずれ買ってしまいそうな気がする(笑)
巨娘・1<木村紺/講談社>
![]() |
巨娘 1 (1) (アフタヌーンKC) 木村 紺 講談社 2007-12-21 |
常々、笑う系の漫画を解説するのは間抜けだと思っているので、「どこが面白いのか」は割愛するけど、わたしはとっても面白いと思う作品。あんな感じに、こまごまとネタを織り込まれるのが大好きなので、隅々までキッチリ読んでニヤニヤしてしまう。
この密度、この濃さ、いったいこの人、どれだけの抽斗を持ってるんだろ。
実は女性か男性かも不明な人なので、こうなるとがぜん、ちむらさん本人に興味が湧いてしまう(アフタヌーンの受賞歴の経過から、男性説が有力)。
同じ作者の作品とは思えない=「神戸在住」とは北極と南極くらい違う作風、と言われてるけど、何のことはない、「神戸」の単行本のカバーを外せば、ちむらさんは元々こういうセンスなのだ…ということがすぐわかる(笑)
話の見せ方(例の「手書きのト書き」など)は「神戸」と同じなのに、どうしてこうも違う世界観なのか、という部分にとまどう人が多いんだろうなあ。ベタやトーンを使うことで、画面はかなり違う感じになってるんだけどね。
具体的な描き足しはほとんどないと思うけど(カバー下も普通だし)、トーンが貼り足されたりで画面の密度は上がってて満足。
未だにはっきりした不掲載理由がわからない「に」も、遂に読めてスッキリした(当初は内容がマズいのではと思われていたけど、読んでみるとそうでもないので、恐らくは「落とした」が理由ではないかと推察)。ある意味、ジョーさんが一番アグレッシブな回なのでは。
「全ての心のボタンをかけちがえて生まれてキちゃった」トオルが、暗黒面に入ると女言葉になるのがとってもコワい(笑)
ジョーさんのどこが好きかって、筋が通ってるトコかな。確かにハチャメチャ、ケダモノ上戸だけど、社会人としての筋が通ってるのはスゴい(タケルはまた違う筋が通ってて、世間的にはこっちの方が「マトモな人」)。精神年齢いくつなんだ。
読後の妙な爽快さって、ジョーさんが「己の筋」を通す様から来てるんだろな(笑)
しかしながら、お下品度、サブカル度、変態度も結構なものなので、読み口にお上品を求める方にはNGと思われ。
やっぱり、昨年度ナンバー2に選んでおいたのは間違いなかった。
万人にすすめられる作品ではないけど、わたしは長いこと、愛読してしまうこと確実。
連載は一段落してるけど、これで終わりということではなく「インターバル」らしいので、ちむらさんの気力が戻ったら、ぜひ続けて欲しい。
- 新しい: 音聴く画伯:January 2008
- 古い: Happy Birthday 2008
コメント:2
- manase January 20, 2008
おかえりなさいまし。
えっ?「巨娘」って「神戸在住」と同じ作者さんだったんですか。まったく気が付きませんでした。
コミックスの表紙しかみたことなかったので、別の人だと思い込んでましたよ。ここまで違うものが描けるのか…スゲー。
画伯たんのお薦めモノは、私には打率8割ほどでヒットしてるので、木村さんの作品も逝けそうな予感。
今度読んでみます。
あ、そんで「神戸在住」10巻の件もさくっと了解です。
お誕生日頃にお届けできそうだからちょうどよかったですわ。フフ
震えてお待ちくださいますよう。- ブリスさん January 20, 2008
ただいまっ!
そう、「巨娘」と「神戸」は、同じちむらさんの作品(笑)
エントリに書き足ししておいたけど、ちょっと下ネタありなんで、お嫌いでしたら止めた方がいいです。
「神戸」の方が、manaseの好みかもなあ。叙情性の高い、静謐な作品と言われているし、実際、その通り。心理描写の細やかさが、作品に現実感を与えてると思う。
特に、主人公が自らの人生の選択を行うほどに影響を受けた人を亡くした後の話(7巻)は、本当に見事な活写だと思うよ。気が向いたら、手にとってみてちょんだい。
10巻の件、わがまま言ってスマソ。よろしくお願いしまっそ。



















