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米猛者と師匠

  • 投稿者: Bliss Appledore
  • Thursday, April 30, 2009 - 11:17 PM

米猛者ですけん、ごはんを食べて元気になったよ。
マンハッタン行き、とうとう敢行しました。
数年ぶり、どころか10年以上も観ていない師匠の原画を観て、心が一杯になった。
しかも、わたしが知らない絵が1点だけあった。
…いやしかし、何という精緻な、そして迷いのない絵なんだろうか。
最後にパリで観た時も、あまりの細やかさと大胆さの双方に、完全にしてやられたのだが、師匠の絵は、いつ観ても衝撃を受ける。
こんな線、こんな色、どうやったら出せるんだろう。


下絵なし&イッパツ描きの、力強い鉛筆の線に縁取られる、繊細で丁寧な水彩の彩り。
あっと驚くほど、見た目の大胆さとは裏腹の、繊細な仕事がしてあるのだ。
観るものに洋服のディテールを正確に把握させ、かつ、ファッションのアイコンとしてのモデルの存在感や、クチュリエの世界観までを同時に表現してみせる、その饒舌さ。
かと思うと、ポートレート・シリーズには、師匠の剥き出しの感性と欲望がある。
男性ゲイならではの筆致が醸し出す、えも言われぬ色香のあでやかさと来たら。
そして、どの絵からも、モチーフに対する愛情が、あふれんばかりに輝いている。
この人は、本当に、ファッションが好きだったのだ。
自分が気に入った人の顔を描くのが、好きだったのだ。
わたしにとっての師匠の絵は、永遠のマスターピースだ。
心の支えであり、目標であり、絵を描くことに迷った時に力を貰える、そんな絵だ。
ある意味で、永遠に追い越せない絵でもある。
相手が鬼籍の人なのだから、これはもうどうしようもないのだが。
いみじくも、冒頭のイヴ・サンローランが遺した言葉は、わたしもよくわかる。
現代には、もう、ファッション・イラストレーターは居ない。
ファッションをモチーフにするイラストレーターは居るが、ファッション・イラストレーターは、いない。
わたしもそう思う。

20090430.jpg

「…わたしたちはアトリエにたくさんのグレーのセーターを持ち込んだ。
これは、アントニオとかれのパートナー、ホアン・ラモスにとっては、チャレンジだった。
かれらはベルトから靴からバッグ、アクセサリー…たくさんの小物を一緒に集め、
この作品を仕上げた。
この時代(84年)、オレンジのバックパックなんて、存在したはずもない!
そう、アントニオはやりとげたのだ!!」

<GQのための絵に添えられた文章の抄訳>

師匠と同じことをやってのけるイラストレーターの存在を、わたしは知らない。
ああ、よかった。
師匠の原画をまた観られて、本当によかった。
展示が某ゲイ・ソサエティに寄付をしているのも、とてもよかった。
師匠はゲイだったからね。
ああー、次に会えるのは何年後なんだろうなあ…。
本はもちろん、全部持ってるから、いつでも会えるっちゃ、そうなんだけどね。
またしばしの、お別れです、師匠。

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