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お誕生日読書2010「SARU」

  • 投稿者: Bliss Appledore
  • Thursday, March 11, 2010 - 04:28 PM

「SARU」(上)五十嵐大介

SARU 上 (IKKI COMIX) SARU 上 (IKKI COMIX)

小学館 2010-02-25
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「海獣の子供」で、分厚い単行本に慣れているせいか、意外にも薄いなあ、と感じてしまったけれど、内容はとっても充実してる。

IKKI公式サイトで公開された「予告編」も大幅に描き直し・加筆がされていて、掲載後にしっかりと練り直したのだな、と感じさせてくれるのが嬉しい。

特に、イレーヌが斉天大聖を名乗るときの顔が描き直されていて、より一層、印象的なシーンになってるのがよかった。

ナムギャルと奈々が一緒に奈々のアパルトマンに来るのも、大家さんが出てくるのも、細かな演出の変更なのだけど、よりよくなってると思う。

上下巻でまとめることが前提になっているせいか、テンポが非常によくて、読みやすい。
いつもながら、空気を描くのが上手い五十嵐さんのこと、作画も申し分なし。

五十嵐作品の系譜的には、「魔女」に連なるものなのだろうけど、キャラが練られていて、より「届きやすい」形になってると思う。

「魔女」シリーズだと、中心となるキャラがみんな超然としていて、やや取り付きにくい感じがあるけど(「魔女」シリーズは、そこが「味」でもあるが)、今回は、奈々という日本人の女の子が、その「ある種のとっつきにくさ」を回避させてるんじゃないかと。

同じ日本人の「平凡な少女(だが実際は物語の鍵を握る、非凡な存在)」であるキャラといえば、「海獣の子供」の流花。
かの女もまた、物語の中で謎を解きつつ物語を動かし、更には「人ではない何か」と「人」に触れ、それらをつなぐ役割を持ってる。

でも、流花がローティーンなのに対して、奈々は成人に近い(または成人している)女性なので、感情の出し方や動きに、より一層の「演出上の平凡さ」が出ていて、流花よりも近しく感じる。

その「近しさ」が、このテンポの良さの一端を担っているように思う。

冒頭の、モザイクのような流れに乗って描かれる幾つかの短いエピソードも、ちゃんと伏線として回収されるし、「魔女」シリーズよりも明確な「対象」を描いているせいか、オカルト系の物語でありながらも、ストーリーはかなりわかりやすい。

もっと突っ込んで描けば描けるだろうけど、そこをあえてバッサリと切った潔さが、よく出来た映画を観ている気分にさせてくれて、そのドラマ性が心地いい。

五十嵐作品にしてはたくさんのキャラが出てくるけれど、どれも描写が印象的、かつ作画が的確で、煩雑な感じが全くないのは感動もの。

わたしはナムギャルの佇まいがすごく好きなんだけれど、それと同時に、ピサロがすごく好きだったりする。

ピサロの描かれ方は、今までの五十嵐作品にはない部分が多数ある(特に、顔を崩して描くなどのコミカルな部分)。
この何というか、静かな異形性というのが、わたしが描こうとしている、わたしが持っている「悪魔」のイメージにとても近いから。

今現在、描いているキャラに対して、まさにピサロのような感じをイメージしていたので、あまりにドンピシャすぎて、ものすごく印象に残るキャラになってしまった。

後半、かれがどう出るのかが、今から楽しみ。

未だ正体が明かされない「黒魔術使い」も、静かな怖さがあって、すごくいい。厨二作品によくあるような、異形性を誇るようなデザインではないけれど、にじみ出るような違和感があって、素晴らしい。
この作画は、五十嵐さんならではだな、と思う。

6月に下巻が出るのが待ち遠しい。

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