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お誕生日読書2010「乱と灰色の世界」「群青学舎」

  • 投稿者: Bliss Appledore
  • Tuesday, December 28, 2010 - 08:20 PM

乱と灰色の世界(入江亜季)

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わたし的には、入江作品に出会ったのは、2010年の大きな収穫のひとつだ。

「特定の靴を履くことで、大人の女性になれる小学生魔女っ娘・乱と魔法使い家族&一族をめぐる物語」、「乱と灰色の世界」。
長期連載作品となっていて、先日無事に2巻が出たばかり。

対して、「乱と灰色の世界」の前にシリーズ連載されていた「群青学舎」は、短編で構成されたオムニバス。中には短編を何本か連作することでひとつの作品になっているものもある。

どの作品も、ストーリーだけを抜き出すと「よくある設定」「よくある話」。

でも、入江亜季の魅力は、そういった「よくある何か」を、圧倒的な筆力で魅せてしまうところだと思う。

キャラクターの性格だけではなく、それぞれが持つバックグラウンドや世界までを緻密に表現してしまう、見事な画力とデザイン力。
コマの隅まできちんと盛り込まれた感情表現、伏線、そしてその回収。

一見、ザクザクと描いただけのような描線は、実はかなり的確に引かれている。
カラーの色使いも独創的で、一目見ればそうとわかる個性が光っていて美しい。

描き込みやストーリーの運びなどから、森薫さんと比較されることが多いようだが、わたし個人は、入江さんと森さんは、メディアが同じでジャンルが違う、と思っている。

音楽で例えるなら、入江さんが質のよいちょっと古めのポップス、森さんは密度のあるクラシック、というところだろうか。

「乱と灰色の世界」では、「群青学舎」でもいかんなく発揮されていたキャラクターのデザイン力が更に強く出ていて素晴らしい。
年齢・体型の描き分けはもちろんのこと、キャラクターが内に秘める何かまでを匂わせるのは、やはり入江さんの画力あってのことだと思う。

絵が昔の少女漫画のようだ、という意見も聞くが、わたし的には、少女漫画のふりをした劇画のように感じる。

どちらかというと、描写に記号的な表現を用いる少女漫画に対し、入江さんの絵は、キャラクターを引き立て、演出するための造形がしっかりとなされていて、それがさりげなくもみっしりと描き込まれているからだ。

そこに、ある種の劇画っぽさを感じる。

「群青学舎」では、王道ファンタジー、学園もの、魔女っ娘もの、様々な年齢層の恋愛もの、日常系など、幅広いストーリーが展開されているが、キャラクターたちがあまりモノローグでの感情表現をしないため、ストーリーを理解するにはある程度の漫画文法に対する慣れと、読解力が必要になる。

長期連載ということもあるのか、「乱と灰色の世界」はモノローグを取り入れてあり、「群青学舎」に比べると、ぐっと読みやすくなった。

読みやすさを選ぶなら、「乱と灰色の世界」をおすすめ。

どの単行本も、オマケ収録分を読むことで、より作品の世界に親しめるようになっており、単行本を買う、という行為を充分に満足させてくれる。

特に、「群青学舎」の最終巻、各短編のキャラが一同に会したオマケ漫画は、気の利いたエンドロールとしてすごくよかった。

確かに、ストーリーを目当てに読む作品たちではないのかもしれないが、濃密に描かれた入江世界を堪能するのもまた、漫画の楽しみ方ではないかと思う。

もしもカバー絵から何かを感じたら、「よくある話」と決め付けないで、ひたってみるのも悪くないはず。

わたしは今年、誕生日読書以外で「コダマの谷」「乱と灰色の世界 2」まで読破済み。

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